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名も無きQAエンジニアのブログ

STAC2015 参加レポート 前編

先日12月13日(日)に東京赤坂にて開催された「システムテスト自動化カンファレンス2015」(STAC2015)に参加してきましたので感想文を書こうと思います。
STACは2013年から開催がスタートして今年で3回目。今年は「システムテスト自動化エンジニアの今とこれから」と題して、システムテスト自動化の取り組み事例や最新トレンドの発表がありました。

セッション1:テスト自動化のスキルを考えよう!

~テスト自動化エンジニアに求められるスキル、 期待される役割~

早川 隆治 氏(テスト自動化研究会)
<発表資料公開待ち>

ヤマン 氏(テスト自動化研究会)

システムテストを自動化するためのスキルセットとはどんなもなのかを認識する。そしてそれらを体系化/標準化して自身の成長や後進の育成に役立てる。というお話。

標準化の取り組みは「誰でも同じ品質で作業できるようにする」「ミスなく作業できるようにする」といった目的で行われることが多々ある。本来は「より良く考えられるようにする」というのがあるべき姿だと思うのだが・・・。そんな実体験から、”標準化”ってキーワードが出るだけで”マニュアル化”や”形骸化”に読めてしまうことがあり、誰がやっても同じになるなら私じゃなくても良いわけだし、標準から外れたことをやれないなら考える必要なくなるわけで、自分は”標準化”って言葉自体が好きじゃない。

けれども本セッションで紹介されていたAutomationTest.SFFでは標準化することによるメリットがとてもイメージしやすかった。特にスライドP.8にあるようなスキルチェック表をレーダーチャートに変換して自己分析できるようになるあたり。今すぐにでもやってみて自分の現状スキルでどのくらいまでカバーできているのか、足りない部分はなんなのかを自己分析してみたくなる。(現状を知るのはちょっと怖いけど)

更に、今自分が業務で取り組んでいる内容に直接フィードバックできそうなキーワードもいくつかあり。「自動化したテストに対するフィードバックをどうやって得るのか」、「テスト結果を元にそこから更に深掘りした自動テストを実施するにはどんな方法を採ればいいのか(SearchBasedという考え方)」、「テスト自動化エンジニアのためのトレーニングカリキュラムをどうやって整備するか」などなど。標準化に対する私の先入観を改善してくれるとても良いセッションでした。

セッション2:自動家は見た

~自動化の現場の真実~

三浦一仁 氏(.reviewrc)

水野昇幸 氏(.reviewrc)


とある自動家(オートメーター)が自身の任務と現場政治との狭間で体験した苦闘の日々を語りながら、これからの未来に向けてどうしていけば良いのかをライブでブレストするセッション。

確かに現場の政治如何でチームの意思とは関係なく自動化がいきなり導入されたりご破算になったりすることはよくある(という小説を読んだことがある)。開発チームからすればマネージャーの当たり外れによって、やりたいことができたりできなかったり。それが無力感につながるってのは非常に共感できた。まさに「あー、あるある」というやつだ。

一方でマネージャー視点から見ると投資に対する効果が見えなければ投資先を変えざるをえない。また、マネージャー自身の知見や経験が無く因果関係が想像できない範囲だった場合は、必要性が理解されづらいというハードルがある。ということもセッションでは語られていた。たしかに「そりゃそうですよね」と納得。

自動化でどんな効果を創出するのか、自動化の価値をどう見える化するのか、ということの”戦略”がシステムテストの自動化を継続していくには必要不可欠で、ひいては自らの成果にも還元されていく。自動化を継続し浸透させていくにはエンジニアリングのみならず政治的な要素も少なからず必要になってくる、ということなんじゃないだろうか。

自身の状況に照らし合わせてみると、テスト自動化が進んでいない未開の地においてテストオートメーターが消費するコストは優遇される傾向にある(気がする)。つまり、「ワー、スゴーイ、カッテニウゴイテルー」というインパクトだけがクローズアップされ(ブラウザが勝手に起動して動くだけで神様扱いになることもあるわけで)、その有用性を問われたりコストと効果を天秤にかけたりすることを免除されがちなんですよね・・・。でもその状態に甘んじることなく常に投資効果と向き合い続ける気概もテストオートメーターには必要なのだろうと自戒しました。

セッション3:広告システム刷新よもやま話

- テストが当たり前となるまでにやったこと

森下 大介 氏(ヤフー株式会社MSC開発本部マーケッターPF開発部)


テストコードが全く存在しない軽量プログラミング言語(Perlとかなのかな?)で記述された既存のシステム。広告に関するシステムは企業にとっては収益をもたらす重要な基幹システムなため、失敗を恐れるあまり大胆な改修に踏み切れない。現場の担当者も破綻を薄々感じながら気合いと根性で膨大な手作業をこなしていたが、そこに転機が訪れて・・・。技術的負債が日々拡大しデスマーチの連続で近い将来の破綻が現実のものとなりつつあるプロダクトをどのように改修し改善していったのか、という話。

技術的な話はいろいろあったので、それはそれで非常に興味深い話ではあったけれど、一番腹に落ちたのは一歩踏み出すための「きっかけ」と、スタート時に一番最初に採った「行動」だった。

きっかけは「上司からの無茶ブリ」

改修スタートのきっかけは上司からの「お前に任せるからやってみろ」という一言だったそうだ。その上司の英断は必要不可欠だと思うしすごいことだけれど、発表者森下さんが上司の信頼に値することを示せたことが、その「やってみろ」につながったんだろうと思う。具体的にどんな働きかけをしたのかはセッション内では語られてはいなかったが、実際にやられた改修の進め方を聴くと上司もやってくれることが想像できていたのかな、という印象を受けた。

最初の行動は「仲間探し」

そして最初にやったことはまず仲間を作ることだった。「一人でやれることは限られているんだから」と言えば当たり前のように聞こえてしまうけれど、チームや部署の垣根を越えた楽しみを共有できるメンバー(バーチャルなチーム、と表現されていた)を集めることは本当に大切なことだと思う。そう言えば「FEARLESS CHANGE」にも同じようなことがたくさん書いてあったなぁ。

ぼっち傾向の強い自分自身のこれまでの行動を見直さなければと反省させられることも多く、これからの行動のために知見を得られるセッションでした。

後編に続く

2015/12/23 追記:公開された資料を貼り付けました。

#stac2015